ここでさくらそうの(園芸)品種に目を向けてみます。現在では、昔から保存されているものを含めると数百種類の品種があるといわれています。
これからさくらそう栽培を始める方にしてみれば、あまりに多くの品種がありすぎてどの品種から始めたらよいか目移りしてしまうことと思います。
また、類似品種同士の見分けがつかないこともあると思います。種間交雑を用いず、微妙な差異を大切にすることで発展してきたさくらそう文化は大変奥の深いものです。
さくらそうとの付き合いを続けていく中で、知らず知らずの内に鑑定眼も養われることでしょう。
とりあえずは自分の好みに合った品種から始めてみるのが良いと思います。
もちろん、品種によっては栽培の難易度も考慮する必要がありますが、仮に強健な品種であっても自分の好みに合わないものを上手に育てることは難しいでしょう。
要は育てやすいものの中から気に入った品種に手をつければよいということです*さくらそう図鑑も参考にしてください。品種を名前や写真から検索することができます。
また、自分が全く見聞きしたことのない品種であっても、愛好家間でのやりとりを通して手に入れた花が思った以上に自分と相性が良かったりするものです。
東京のさくらそう会が行っている認定制度も一つの指標になると思います。しかし、注意しなければならないのは、認定品種もそうでない品種も同じさくらそうであることに変わりないということです。
花の価値を決めるのはあくまで栽培者自身です。現代では、さくらそうの品種に*序列はありません。感性や好みは個人個人で異なるものですから、花の好みが分かれるのはごく自然なことです。そうした中から良いものは長く残り、そうでないものはやがて顧みられなくなります。
さくらそうの品種保存・改良には個々人の持つ多様な感性が生かされたからこそ多くの品種が現在にまで保存されるとともに、日本のさくらそう文化がここまで発展できたのでしょう。
数多くの花を見ているうちに自分の好みに合ったものが見つかるはずです。外見の他にも、作出年代を絞ってアプローチしてみるとか、特定の愛培家の作出花を眺めてみるとか、楽しみ方や切り口は十人十色です。
*江戸時代のさくらそう愛好者の集まりには、優れた方から順に、無極、玄妙、神奇、絶倫、雄逸、出群という6段階の基準があったことが知られています。
*さくらそう図鑑の中にはもちろん私が栽培している品種も多いですが、そうでない品種も含まれています。 |